第一章 -3- 脱走

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 身体を広げて見せて、ラグナは余裕ぶった口調で言う。 「あんたも出してやれるけど……白昼どうどうと脱走なんかしてみろ。神殿から出る前に捕まるぞ」  オレ一人なら逃げられるけどな、と付け足してラグナは不適に微笑んだ。  さもラキエルの事をお荷物と言いたげな口調に、ラキエルは表情を険しくする。逃げるに関しては百戦錬磨のラグナから見れば、ラキエルが頼りなく見えるのは致し方ない。けれど、あからさまに足手まといだと決め付けられるのは、ラキエルとしても面白くない。  鉄の柵を両手で掴み、ラキエルは一歩ラグナに詰め寄る。それに気付いたラグナは、ラキエルに止まれとでも言うように、手を前に差し出した。 「怒るなって。別にあんたがお荷物だなんて言ってねぇだろ」  琥珀色の瞳を細めて、ラグナがラキエルを見据える。  心を読まれたかのような言葉を耳にして、ラキエルは開いた口を閉じた。ラグナを訝しむように見つめる。ラグナは軽く息を吐いて、呆れたといった感じで肩を竦めた。 「あんたさぁ、口数が少ない割りに分かりやすいよな。そんなんだから、朝みたいに絡まれて騒動にまで発展するんだよ。そういう性格は悪くないけど、面倒に巻き込まれるぜ?」 「……そうなのか?」     
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