135人が本棚に入れています
本棚に追加
ラグナの協力があれば、ラキエルもこの牢獄から出れる。けれど今は、ラグナの力無しにここから出るなど、無理な話なのである。ラキエルにはラグナを信じるより他に道は無い。
「ここからは出してやるさ。でも、逃げるのは夜だ。昼は天使どもが徘徊してるし、あんたがまた神殿の奴らに絡まれたりしても厄介だからな」
「じゃあ、それまでここに隠れているのか?」
「ああ。あんたはここで静かにしてればいい。オレは外の様子を見てくる。夜になったら迎えに来るから、それまでは寝たふりしてろ」
「なんでふりなんだ?」
寝てろとは言わないラグナの言葉に疑問を持ち、ラキエルは尋ねる。
「またここにじじぃが来たとして、あんたが嘘を吐き続けられるか怪しいからな。じじぃなら寝てる奴を起こそうとはしないだろ。だからって本当に眠って、オレに起こす手間を掛けさせんな」
実に自分本位な答えを返され、ラキエルは閉口した。
なるほど、これではディエルも頭を抱えるわけだ。ラグナはわざと相手を怒らせるような言葉を投げては、その反応を楽しんでいるのだ。そんなラグナの言動にいちいち言い返していては、ラキエルの方が参ってしまう。
あえてラグナの言葉を無視して、ラキエルは軽く頷いた。
壁際まで下がるとそのまま床へと腰を下ろす。それを見届けたラグナは一瞬つまらなそうに瞳を細めた。
「じゃ、また後でな。寝てたら置いていくからな」
最初のコメントを投稿しよう!