序章

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「わたくしの望みはただ一つ。自由の身となり、全てのしがらみより解放される事……。けれど王族たる者、責務と誇りは捨てられぬ。だから……永遠にその楔より解き放たれる事はない」  地位というものは時に人を縛る枷となる。生まれながらにして王の血を引き継いだラフィーナに、自由は無かった。国を思い、ゼルスの元へ行くという決断すら、周りに引き止められた。結局、最期まで自らの行く末を選ぶ事すらできなかった。望みは失われ、今はただ絶望を心に、終焉を待ち続けるだけ。今更、誰がラフィーナを救うというのだろうか。全てが失われ、この先に望みは無い。今のラフィーナに出来るのは、最期の抵抗にゼルスへ一矢報いる事だけだ。  ラフィーナは望みを告げても無駄だと理解していた。何もかもが遅すぎた。せめて、国が滅びる前だったならば、望みも叶えられたかもしれない。叶える意味があったのかもしれない。けれど滅び行く国でただ一人残された今、自由に何の意味があるのだろうか。 「自由を望むか……」  ラフィーナの思いを知らぬ天使は、彼女の望みを口にした。  天使はラフィーナに突きつけた杖を手元に戻すと、ゆっくりとラフィーナへ歩み寄ってきた。     
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