135人が本棚に入れています
本棚に追加
「馬鹿言うな。時間がねぇんだよ。嫌なら牢に戻って潔く死ね」
「馬鹿を言ってるのはおまえだ! あの剣は特別だ。俺が触れていいものじゃない」
太陽神より贈られた剣というのだから、名刀に間違いないだろう。だが、神に祈りを捧げる場所で盗みを働くなど、ラキエルの良心が許さない。天使にとってはもちろん、この剣はディエルにとっても大切なものだ。誰かが盗んだとなれば、あの優しい老天使は悲しむだろう。
そんなラキエルの心知らず、ラグナはひょいっと翼をはばたかせて飛び上がる。
制止しようとしたラキエルの手は届かず、ラグナは当然のように壁の剣を掴んだ。
「ラグナ!」
ラキエルが非難の声を上げた。
ラグナは楽しそうに笑いながらラキエルを振り返る。
しかし、一瞬のうちに余裕ぶった表情が崩れた。
突然手に持つ杖を振り上げて、同時に何かを叫ぶ。ラグナの前に薄く丸い硝子のようなものが浮かんだかと思うと、それは突然飛んできた白い光によって打ち砕かれた。
鼓膜を突き破るような高い破裂音が響き、部屋の中に目も開けられないほどの光が爆発する。爆風がラキエルの元まで届き、ラキエルは顔面を庇いその場に伏せた。
「そこまでだ、ラグナ」
聞き覚えのある厳格な声が、部屋の隅々まではっきりと響いた。
最初のコメントを投稿しよう!