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第一章 -4- 自由の翼
黒く、暗く、一欠けらの光も存在しない暗闇の世界に投げ出された。
身体を包み込んでいた光は消え失せて、視界は混じり気の無い純粋な漆黒で塗り潰される。辺りには人の気配も無く、ただ耳に痛いほどの静寂に満ちていた。四方を見渡しても暗い空間だけが存在していてる。
突然の事に状況を飲み込めず、ラキエルは沈黙のまま視線を配らせた。
すぐ傍で、衣擦れの音がラキエルの耳に届く。ラキエルは反射的に振り向いて、闇の奥に存在するであろう人物の反応を待った。
小さく何かを囁いたかと思うと、仄かな光が浮かび上がる。
青白い光に照らし出されたのは、ラグナだった。
彼は不機嫌そうに眉根を寄せて、探るように辺りを見回している。ラグナも先程の金色の光に包まれて、この場所まで飛ばされてきたらしい。腑に落ちないといった表情を浮かべているところを見ると、どうやら先程の移動魔術を使ったのは、ラグナでは無さそうだ。
ラキエルが声を掛けようとした所で、先に何かを見つけたラグナが口を開いた。
「手出しするなって言ったはずだぜ?」
暗闇の彼方に向かって、ややきつい口調でラグナは言い放つ。
すると、闇の奥底で何かが小さく震えた。
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