第一章 -4- 自由の翼

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「別に、本当の事しか言ってないぜ? それよりもさっさと行くぞ。この場所だって安全じゃない。じじぃが乱入してくる前に門まで行かないと、お前は牢に逆戻りだ。他人の心配するよりも、自分の事だけ考えてろ」 「でもっ」  助けてもらった相手に対する態度にしては、いささか酷い。  サリエルとラグナの間に何があったかなど、ラキエルには知る由もない。だが、どう見てもラグナが一方的にサリエルに冷たく当たっているように見える。  更に食い下がろうとするラキエルをサリエルが止めた。 『良いの……本当の事だから。ラグナの言うとおり、早く逃げた方がいいわ。もうすぐここに、ディエル達がやってきます。見つかる前に、お行きなさい』  サリエルは寂しげな表情を隠すように笑顔を浮かべた。  宙を彷徨う視線は闇の彼方へ、けれど彼女が見ているのは一人の青年だった。  どんなに冷たい態度を取られようとも、サリエルはラグナだけを見ている。それが恩寵を与えた者への愛情なのか、ラキエルには理解しかねた。だが、二人の間には目で見えない絆があり、それをラグナが断ち切ろうとしている。 「サリエル様は一緒に来られないのですか?」  このまま二人を別れさせても良いものだろうか。  ラキエルの見た夢の中で、娘は泣いていた。     
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