第一章 -4- 自由の翼

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 ラグナはラキエルを救ったが、罪人を庇いながら逃げるほどの力を持っていない。だからラキエルは、ラグナを護りながら天界より逃げなくてはいけなかった。しかし、よくよく考えてみれば、ラグナが逃げる必要など無かったはずだ。ラキエルを逃がすだけで留まれば、彼は今までどおりの生活を続けられたはず。それなのにラグナは危険を承知でラキエルと共に逃走を図った。つまり、ラグナも天界から出る事を望んでいたのだ。  それをサリエルが知っていたのか定かではない。けれど、サリエルはラグナの意志を何よりも尊重している。彼の望みを叶える為に、ラキエルの助力が必要だというのだろう。  だからこそ、危険を冒してまでサリエルはラキエルを救った。この事が明るみに出れば、サリエルといえども、咎められないはずが無いというのに。  ラキエルはサリエルの白銀の瞳を覗き込み、静かに頷いた。 「……はい。必ず」  サリエルはラキエルの言葉に安心したように微笑み、そっと細い両手を持ち上げた。 『門のそばまで送りましょう』 「いい。自分で行ける」  サリエルの申し出を断るラグナに、サリエルは零れんばかりに愛らしく微笑みかけた。 『これで最後だから。少しだけわたくしに御節介をさせて』  痛々しいほど健気に、サリエルはラグナを気遣う。  そんなサリエルの態度に言い返せなくなったのか、ラグナはそっぽを向いて「好きにしろ」と呟いた。  サリエルは嬉しそうな表情を浮かべて、今まで一度も開かなかった唇を開いた。 「ありがとう、ラグナ」  高く澄んだ声が、優しい響きを纏い闇に木霊する。     
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