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一人きり、闇の中に取り残されるサリエルが酷く不憫に思えた。何故ラグナは冷たく当たっていたのだろうか。優しく儚げな女神に、どうしてあのような態度を取ったのか。ラキエルには理解できない。
だが、ラグナの最初の言葉を思い出し、彼を非難する事もできなかった。
――神々の恩寵はただの呪いさ。
確かに、ラグナはそう言った。
ラキエルに与えられた滅びの女神の恩寵が重荷となるのは理解できる。滅びの女神の恩寵とは名ばかりで、実際それは呪いと呼んでも差し支えないものだ。けれど月の女神の恩寵は、ラグナに様々な力を与えたはずだ。高い魔力を有すると言われているサリエルの恩寵があるからこそ、ラグナは魔術を好き勝手に操れるのだろう。
ラグナがサリエルに対して冷たかったのは、何故なのだろうか。
金色の光に包み込まれたまま考え続けていると、突然後頭部に鈍い痛みが走った。
「何ぼーっとしてるんだよ。ほら、さっさと行くぜ?」
振り返った先で、ラグナが憎まれ口を叩く。
いつの間にか空間移動は終わっていたらしく、ラキエルは細い橋の上に立っていた。
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