第一章 -4- 自由の翼

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 橋の下は底の見えない夜空が広がり、緩やかな風に雲が流されていく。一定の距離に間隔をおいて聳え立つ柱が橋の両端を飾り、橋を構成する石には独特の魔術文字が刻まれていた。記憶に間違いが無ければ、ここは時空の門へ続く橋だ。  ラグナはさっさと橋を歩き始め、慌ててラキエルもその後を追った。 「ラグナ、どうしてあんな言い方するんだ」  どうしても心に引っかかり、ラキエルはラグナに問いかける。  初対面のラキエルにも、彼はあのような態度を取らなかった。  ディエルに対しては馬鹿にしているといった感があり、噂に聞くラグナは冷たい人間というよりも、愉快犯といった感じが強い。けれどサリエルに対する態度は、あからさまに冷たかった。言葉も少なく、馬鹿にした風でもなければ貶すわけでも無い。  だが、誰よりも距離を置いているように見えた。  まるで、腫れ物に触るような態度を垣間見て、ラグナの真意がますます読めなくなる。 「何の事だ?」  ラキエルの問いにラグナは振り向かずに応える。 「サリエル様の事だ」  突然ラグナが歩みを止めて、くるりと振り返った。 「まずオレから質問。あんたさぁ、あいつの事本当に女神様だとか思ってるわけ?」 「……は?」  ラグナの質問の意味が理解できず、ラキエルはラグナの問いを復唱してみる。深くその答えを考えたが、辿り着く応えは一つだけだ。 「神の血を引く御方だと聞いた」     
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