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「あーあ、あんた騙されてるよ。あいつは女神なんかじゃない。フィーオやじじぃが嘘八百を並べ立てて、勝手に崇め奉ってるだけさ」
「どういう事だ?」
サリエルの存在は、天界で唯一の女神であり、天の象徴そのものであると言われている。その姿を見た事など一度も無かったが、ラキエルは月の女神が尊き存在だと信じていた。けれど実際にサリエルの姿を目にして、彼女が女神なのだといわれてもぴんと来ない。
あまりにも幼く、儚げで、今にも消えてしまいそうだった小さな少女。神と呼ぶには優し過ぎる気がした。薄っすらとだが、サリエルの表情や言葉からは隠しきれない感情が滲み出ていた。女神と呼ばれる人が、天使の言葉に一喜一憂するものなのだろうか。
そう、確かにラキエルの想像していた神とは違う。
だが、ラグナに違うと言われても、今一信じられない。
「あんたさ、何でもかんでも信じりゃ良いってもんじゃないぜ? サリエルはあそこに幽閉されてるのさ。神の象徴として、いいように利用されてる」
「利用……?」
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