第一章 -4- 自由の翼

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「確かにサリエルは神の血を引いてるのかもしれないが、神様なんかじゃない。並外れた魔力を持ってるし全然歳も取らないが、あいつはただの子供だ。回りの存在に流されて、神様の名を押し付けられてるのさ。……そんな偽りの女神様の恩寵を頂いたオレが、どうして自由気ままに出来るか、不思議だと思わねぇ?」  天界一の問題児ラグナ。彼が今までに働いてきた悪事は、容易く許されるものでは無いはずだ。いくら逃げ続けているとはいえ、神殿にいたのではいつかは捕まる。しかし、ラグナが捕まったという話は一度も聞いていない。それは一体何故なのだろうか。 「サリエル様が神じゃないなら、おまえは裁かれてるはずだ。どうして見逃される?」  ラグナはその問いかけを待っていたとばかりに口角を上げた。 「オレはあいつが逃げ出さないための足枷さ。だからオレは何をしても野放しにされてる。じじぃとフィーオが大切にしてるのは、女神としてのサリエルだからな。逃げ出されたら困るらしいぜ。……知ってのとおり、オレに戦う力が無いからな。上の奴らは安心してた」  面白そうに遥か遠くの夜空を眺め、ラグナはゆっくりとした口調で語る。 「おまえは逃げ出す機会を窺ってたのか?」  ラキエルに脱走を持ちかけてきたラグナ。  気まぐれで掴みどころが無く、今の今までラグナがラキエルを救う意味が分からなかった。だが、ラグナの言葉を聞いて、ようやく全てを理解する。  天界より逃げたがっていたのは、ラキエルではなくラグナだったのだ。     
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