第一章 -4- 自由の翼

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「そうさ。煩わしい神も天使も規則も無い世界に行きたかったんでね」  悪びれた様子も無く、嬉しそうな表情のままラグナは言う。  隠し事もせずに堂々と本音を晒すラグナに半ば呆れ、ラキエルは怒る気が失せてしまった。結果的にラグナはラキエルを利用したのかもしれない。けれど、ラグナがラキエルの命を救ったのも事実だ。それだけは、ラキエルも感謝している。  利用されたというよりは、利害が一致したから共に行動したと考えた方がしっくりくる。  ラグナの不可解な行動の理由は解ったが、もう一つ疑問が生まれた。 「でも、どうしてサリエル様を置いていく?」  サリエルの足枷がラグナだと言うのならば、ラグナはサリエルと共に逃げても問題無かったのではないだろうか。サリエルがラグナの足枷となっているわけではないだろうに。けれどサリエルは身を引き、ラグナはサリエルを突き放すようにしていた。  そうまでする理由があったのだろうか。  サリエルが利用されているというのならば、尚更救うべきではなかったのだろうか。  ラキエルの問いにラグナは微笑を消し、つまらなそうに石の橋を見つめた。     
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