第一章 -4- 自由の翼

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「これ以上あいつと関わるのは御免だ。――それに、言っただろ? 神の恩寵は呪いだ。必ず何かしらの災いを呼ぶ。アルヴェリアみたいに……」 「アルヴェリア……?」  十二の神々の寵愛を与えられた至高の天使。  誰もが羨望の眼で見つめていた、神にもっとも近い場所にいた天使は堕天した。その理由は明かされていない。ただ、アルヴェリアの狂気として語り継がれ、伝えられて、ラキエルもそうと思い込んでいる。  けれどそれは違うのだろうか。  ラグナの言葉は抽象的過ぎて、そこに見え隠れする偽りと真実の境目が見えない。 「どういう意……」 「ラキエル! 伏せろっ!」  突然ラグナが大声で叫び、ラキエルの傍まで駆け寄り、自分よりも高い位置にある頭を押さえつけた。ラグナに引っ張られるような形でラキエルは石の床に屈みこむ。抗議の声を上げようとしたが、それよりも早く何かが大地へ突き刺さる。  十数本の矢だった。鋭く尖った刃先が石の隙間に突き刺さってた。 「もう追ってきたのかよ、くそじじぃ」  忌々しげに舌打ちをして、ラグナは立ち上がった。  ラキエルもそれに習い、素早く身を起こすと背後を振り返った。  橋の彼方の空に、先程ディエルを囲っていた十数人の天使たちが見える。今度は槍ではなく弓を持ち、二枚の巨大な翼を羽ばたかせて津波のように迫り来ていた。     
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