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口早に吐き捨てて、ラグナは背後を振り返った。
ラキエルには何も見えないので、天使たちが追ってきているのかは判らない。だが、ラグナが舌打ちした事により、先程と状況が変わっていないと気付く。
「これも予想範囲内ってわけか。月が消えたってのに、随分と落ち着いてやんの」
忌々しげに言い、ラグナは小さく口の中で呪を唱えた。
ラグナの杖の先端に光が灯り、遥か先の闇を照らす。
魔術によって作り出された光が示すのは、時空の門。ラキエルの腕を解放し、ラグナは三枚の翼を羽ばたかせ舞い上がる。
「止まると打ち落とされるからな?」
親切とは違う忠告を言い渡し不適に微笑む。ラグナはラキエルと距離をとった。
「ラグナ、光なんて呼んだら的にされる! 早くそれを消せ」
叫ぶラキエルの声を笑って流し、ラグナは打ち落としてくれといわんばかりに挑発的な飛び方を始めた。風に舞う木の葉のような、危なげで不規則な旋回を繰り返す。その間、何度も弓が射られ、しかしラグナは事も無げに悠然と避ける。このような時まで遊んでいるようなラグナの態度に微かな怒りを感じつつも、ラキエルはラグナの照らした扉へと飛び続けた。
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