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飲み慣れない酒を飲んだせいだろう、気がつけば見知らぬ路地裏に迷い混んでいた。
まったく最悪の飲み会だった。
「前途有望な若人たちの未来を憂う会」
と言う名の、進路も就職先も決まらない浪人生のキズの舐めあいの場。
誰も彼も実力も実績も無いのに、若さのみを過信して暴言を吐いている。
「この国を牛耳る某は許せん。コロス」
「あいつらマジ死ぬべきじゃね?」
男も女も口汚くそこにいない人物をなじる。
そんな雰囲気にイヤ気がさし、開始早々に「急用ができたから」と逃げてきた。
幹事の西村は良い奴だが、人数合わせの為に僕を誘うのは勘弁してほしい。
薄暗く、どう繋がっているか分からない道をひたすら、勘だけで歩く。
吐く息が白く、鼻先がかじかんでくる。
ふと人の気配を感じ、脇道を見やると、数人の影が見てとれた。
表側は店舗かなにかと思われる建物の裏口に、作業服姿の男たち。
しかし異様なのは、彼らが銀行強盗が被る様な黒い覆面をしている所だ。
「急げ」「指紋は拭いたか」「車を回せ」などと聞こえる。
犯罪者だ。
五人の男が抱えた袋をガチャガチャ言わせながら、こちらに向かってくる。
逃げなければ。
しかし身体が強ばって動かない。
「誰かいるぞ!」男の一人が懐から何かを取りだし僕に向ける。おそらく拳銃であろうそれが鈍く光る(実際は暗いのでよくはわからなかったのだけれども)。
僕は死を覚悟した。
だが次の瞬間。
バタン!!
店の裏口が勢いよく開き、何者かが凄まじいスピードで駆けてくる。
その勢いのままヒラリと飛び上がり、男たちの後ろから、両足で(!)跳び蹴りを喰らわせた。
銃を持った男はバランスを崩し、パーンと軽い音を立てて玉があらぬ方に撃たれる。
男達は混乱状態におちいり、その隙に新参者になぎ倒されていく。
肉を打つ鈍い音が何度か響くと数人の呻き声の後、あたりは静かになった。
遠くで警察のサイレンの音が響いている。
・・・助かった。
「あ、あの・・・」
ありがとうございますと続けようにも、周囲には気絶している犯人達以外は人影は無く、僕は途方にくれた。
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