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「・・・それで顔も見ていない命の恩人を探しだして、お礼が言いたいって事なのか?」
あれから1ヶ月。世間を騒がせた窃盗グループの報道はすっかり下火になっている。
駅前通りを下に眺める喫茶店の二階に僕と西村はいた。
「あの後は警察の取り調べやら、宝石店のお礼状のラッシュで大変だったんだ」
騒ぎのあった場所は、地元では有名な宝石店「ガイア」の裏口だった。危うく被害を免れた店側は、浪人生には分不相応な額面の謝礼を贈ってきた。が、これを受けとるべきなのは僕じゃあない。
「変わってるよなーお前は。おれならしめしめと頂くぜ?」
「そういう訳にもいかないさ」
「あーあ。俺にも、うまい話が来ればなー。いやはや」
西村は下の通りに目を向ける。合わせて下を向くと原付バイクが商店街を突っ切っていくのが見えた。風変わりなダボダボとした半纏を着ているな・・・いやよく見ればお寺の住職がよく着ている袈裟だ。小柄な僧侶が風に袂をなびかせながら走り去っていった。
「お坊さんもバイクで檀家さん回りか。世の中平和だね」
全くだ。
同じ町内で強盗だって起こってるのに。こうして友人とダベっているとそんな事がウソみたいだ。
「そうだ坊主と言えばさ」
西村が真面目くさった顔で切り出す。
「某一部で有名な都市伝説サイトで見たんだけどさ・・・」
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