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西村が店の紙ナプキンに書いた地図を頼りに住宅地を僕は歩いている。
西村曰く、
「絶対に助からない病気の手術をしてくれた謎の医師だとか、自殺を踏みとどまらせてくれた通りすがりの登山者とかを探してくれる探偵がいるらしい。しかもこのS県に」
半信半疑ながらも興味のわいた僕はその場所を訪ねようと、隣町に来た。
今まで気がつかなかったが、その場所は意外と身近に沢山ある。
そう、お寺だ。
方向音痴な僕だが、どうやら目的地に辿り着いたようだ。
住宅の切れ間に不意に石の立垣とよく手入れされた植え込みが出現する。
見上げれば周囲の一戸建ての数十倍あろうかという日本家屋。
中心には本堂とおぼしき大建築。
渡り廊下で繋がった離れの館が見てとれる。
目的の『延命寺』だ。
木製の大門から玉砂利の敷き詰められた小路を御堂に向かって歩く。
受付のような場所が分からない。
人気の無い沿道を行ったり来たりしてしまう。
小柄な人が立っているな、と近づくと、立て看板だった。
『御回向の方はこちらへ。尋ね人は裏門におまわりください』とある。
一旦、外に出ると外壁を右手にぐるりと一周する。
「まるでダンジョン攻略だなあ」
行ったり来たりでつい愚痴が出る。
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