4人が本棚に入れています
本棚に追加
「お初にお目にかかります。お忙しい所申し訳ありません・・・」
「君。そのお辞儀の仕方は謝罪の時の角度だ。やめたまえ」
厳しく冷たい声音。驚いて彼を見上げた僕は目を見開いた。
「!?」
皆さんは『ノートルダムの鐘』という作品はご存知でしょうか?僕は回顧趣味で一昔前の映画をよく見るのですが、その中にフランスの大聖堂を舞台にした作品があります。
主人公は酷く醜い容姿で描かれるのです。
ひと目で気の毒に思う相貌。折れ曲がった背中。節くれだった手足。
友人と云えば石像のみ。せっかく芽生えた愛も、愚鈍な民衆の偏見によって摘み取られてしまう男・・・。
僕は人を見かけで判断するのは前時代の悪習慣だと考えている。
しかし目の前に現れた男はあまりにハマり役で僕は絶句してしまった。
「俺の姿に驚いているようだが」
彼は映画と同じ笑みを浮かべ、
「君も他の奴等と同じ冷やかしかね。だったらお引き取り願おう」
「い、いえ。命を救って頂いた方がいて、どうしてもお礼が言いたいんです。でもその人は名乗り出てこなくて、それでその」
僕はしどろもどろながら説明をした。
「ふむ。では入りたまえ。あいにく主人は来客中だ。お待ちいただこう。」
男は振り返ると奥に向かってスタスタと行ってしまう。
「お、お邪魔します」
最初のコメントを投稿しよう!