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奥の間は小上がりになっており、普段は精進落としなどを行うのだろう畳み敷きの部屋だった。
僕は座布団に慣れない正座をして、主人と相対した。
「わたくし、この様な生業を致しております」つと名刺を差し出してくる。
「ぼ、僕いえ私は名刺は切らしておりまして。ああいえ普段から所持はしてませんが」
あたふたしながら頂戴する。
『延命寺 住職
御札 摩由利 みふだ まゆり
失せ物及び人捜し祈祷承ります』とある。
なるほどこれで『おれいまいり』の謎が解けた。
「ご依頼を伺う前に、一つ申しあげておく事がございます」
真摯な眼差しで見つめてくる。軽くドキリとしながら、僕は頷く。
「探偵話の噂をお聞きになって、お見えになったと言うことですが、わたくし・・・」
間近で見ると、彼女は誰かに似ているような気がする。
たしか、日本初のミスユニバースに出た女性・・・なに絹子さんだっけか。
「わたくし推理は致しません」
ぼんやりと聞いていた僕はえ?となる。
「身辺調査も張り込みもできません。そう厳密に、いえやんわりと言っても」
えええ?
「わたくし探偵ではありません。ですが」
僕はすっかりペースにはまっている。
「神頼み、いえ仏頼みを致します」
ええええーっ
僕と想像の中の絹子さんが揃ってズッこけた。
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