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奈緒子が城北大学に勤め始めてから三ヶ月が経ち、季節は梅雨を迎えていた。
厚く黒い雲の切れ目からは、束の間の日差しが、露に濡れた草木を照らす。
そんな貴重な晴れ日に、奈緒子は先輩職員の芦田と地下倉庫の整理をしていた。
文学部棟の地下一階にある倉庫は、小さな会議室ほどの広さだが、足の踏み場がないほど古い書類や物品で溢れ返っている。
上からの命令によるこの任務は、放置し続けた過去の遺物産物を、若手職員に体よく押し付けた形だった。
物を動かす度に舞い上がる埃と格闘しながら、芦田は廃棄処分する段ボールをドアの外へと放り投げた。
「鈴原さんは、日本文学に詳しいから最上研究室に配属されたの?」
粉塵対策でマスクをしているため、芦田の声はくぐもっていた。
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