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「この事件を通して、最上の危うさがよく見えただろ。お前に最上は救えるのか?」
奈緒子は加々見と目を合わせたまま、逸らさない。
彼の目の下には、隈が色濃く刻まれていた。
「必ず……と約束は出来ませんが、やってみせます。元専属職員という立場の義務感とか、同情とかじゃない。私は私の意志で、ただ側で最上先生を支えたいんです」
たとえこの答えが肯定されなくても、背中を押す言葉を貰えなくても構わない。
奈緒子は本心を表白するのに相応しい言葉を探しながら、徐に話を続けた。
「古典籍から危難が取り除かれて、酒井教授の遺志が果たされたと言っても、まだ終わった訳じゃない。全てが元通りに戻る瞬間を見届けるのが、ある意味で私の使命だと思うんです」
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