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加々見は椅子に深く背中を預け、脚を組み替える。
「ふーん。良いじゃん、立派な志」
皺だらけのくたびれた背広に身を包み、疲れ切った様子ながらも、捩れた笑顔を見せた。
「ま、頑張れよ」
***
仕事が終わり、奈緒子は最上のアパートを訪れた。
鞄からキーケースを出し、最上の家の鍵を手に取る。外出をしなくなった最上から、半ば強引に預かったものだった。
「お邪魔します」
家に上がる事にもすっかり慣れてしまった。
キッチンに寄って野菜や生鮮食品の入ったエコバッグを置くと、リビングに向かった。
今日も最上は、奈緒子に背を向け、ソファに横になっていた。
「最上先生。今日は警察の加々見さんが城北大学にいらっしゃいました。加々見さんも先生の事を心配していましたよ」
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