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最上はそれまでグラスに伏せていた視線を上げ、奈緒子を真っ直ぐに見据えた。
「近頃、人文科学の価値が問われているよね。人文よりも自然科学にもっと重きを置くべきだとか、文学部は廃止にしても良いんじゃないかって議論が起こっている。これに関して、鈴原さんはどう思う?」
奈緒子の手が、ピザを口に運びかけた途中で止まる。
最上はテーブルの上で両手を前に組み、何時(いつ)もの微笑を湛(たた)えていた。
これは……試されている、のかもしれない。
私が最上先生とどれくらい共鳴できるのか、最上准教授付として、彼の右腕になり得るだけの器があるのか。
ともすれば、これは職員採用試験の最終面接の延長線上にあるのだろうか?
しかし、そこで奈緒子の思考は、はたと立ち止まる。
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