あらたまの日

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最上の発する強い言葉は、特別な説得力があった。 私の目の前に座るこの人は、本物のプロフェッショナルとして存在している。 最上先生の軸にあるものは、自信か責任感かプライドか、或いはその全てか。 研究に対する揺るぎない信念を抱いているからこそ、この若さで准教授にまで上り詰めたのだろう。 「……っと、愚痴みたいになっちゃったね。ごめんごめん」 「いえ」 奈緒子は首を横に振り、話題を変えた。 「それより最上先生、古典学習のことでちょっと思ったですが……例えば源氏物語や枕草子などの内容を、原文じゃなくて漫画版を読むことで覚えたりする学習法は、最上先生的には賛成ですか?それとも邪道に思います?」 「そうだね……漫画版や平易な現代語訳も、取っ掛かり易い点では良いと思うけど、個人的にはやっぱり原文が一番だな」
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