あらたまの日

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「俺が言いたかったのは、現代語訳版だと、良くも悪くもその訳者の解釈に影響されてしまうってこと。だけど原文ならば、解釈や想像はどこまでも読み手の自由であることが出来る。いわば、その人だけの世界なんだ」 「あ、だから『生の声』ってことですか。作者の声を直接拾うことのできる原文という意味で。へぇ、古典って面白いんですね」 「そうなんだよ!古典ってハードルが高いと思われがちだけど、要は好き勝手に読んでいけば良いんだ。幾つかの現代語訳を比較して『この文脈の解釈が分かれているのはどうしてだろう』って不思議に思ったり、『何かこの表現は綺麗だなぁ』って感じたり、楽しみ方は何だって良い」 最上の熱量に圧倒されて、奈緒子は相槌代わりに頷くしかできない。
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