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花橘の五月のこと、この日、奈緒子は城北大学に来てから初めて、所属部署の飲み会に参加していた。
『鈴原奈緒子さん歓迎会』と称されたその会には、正規雇用や非常勤の垣根を越えて、酔いと熱気に満ちた交流がなされていた。
奈緒子の手元には、殆ど中身の減っていないレモンスカッシュが置いてある。
それとは対照的に、長テーブルの端には、空になったビールの中瓶が幾つも並べられていた。
これらを消費した張本人たち、アルコールの回ったパート女性陣により、赤裸々な会話が繰り広げられていた。
「ねぇ、鈴原さんって『秘密の部屋』の中って見た?」
隣に座る女性が奈緒子に尋ねる。
ファンタジー児童書に見かけたことがあるような単語。奈緒子は首をかしげた。
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