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今ここで必要な言葉は、『おっしゃる通りです』のみだ。パート勢のイエスマンでいることが、職場での世渡りの上で得策だとは理解していた。
概して女性は、同意と共感を求めるものである。かく言う奈緒子も自分に共鳴して貰えれば嬉しいし、ましてや目の前の女性たちは尚更そうだろう。
だって、そうやって生きてかなきゃ――奈緒子の脳裏に苦い記憶が過る。
『ただの事務職のくせに、空気読まないからだよ』
『ごめん……だけど、もう話し掛けてこないで。私たちだって、あの人たちに目を付けられたくないし』
そう、二度と同じ失敗は繰り返さないって、あの時決心したじゃない。
世界から味方が消えていく瞬間の感覚を、私はまだ忘れていない。
狭いコミュニティーの中で敵を作るだなんて、迂闊な行動は控えなければ。
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