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でも、パートさん達の言葉をそのまま肯定したら、最上先生に対する陰口を言ったのと同じことになる。
女性を連れ込んで遊んでいるだなんて、最上先生にとったら酷い噂だろう。
私にとっての最上先生は、一応上司みたいなものだから、悪くは言いたくない。口は災いのもと、といった諺があることだし。
さりげなく躱(かわ)すのがベストだろうけど、なけなしの処世術しか持たない私に出来る?
浅く開けた唇から息を呑み込むと、こくりと喉が鳴った。
「それは……私は、その」
「皆さん、またその話で盛り上がってる」
頭上から苦笑い交じりの声が降ってきた。
続いて空いていた右隣の席に、半分に減ったビールのジョッキが置かれる。
「もちろん俺は、最上先生が研究に集中するための部屋、に一票で」
奈緒子と最も歳の近い先輩職員、芦田が腰を下ろすと、シトラスの香水の薫りがふわりと流れてきた。
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