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最上は頁を繰る手を止めた。しかし視線は書物に注がれたままだ。
「もしかして、教務のパートのおばちゃんたち?」
ピン、と糸を張ったような最上の聲に、奈緒子の思考は立ち止まる。
最上の洞察力は、奈緒子の脳内から昨日の飲み会の光景を丸ごと読み取ったかのようだった。
越えてはいけない境界線を、踏んでしまった。そう判断した奈緒子は、すぐに引き下がった。
「余計な詮索をしてしまって、申し訳ありません」
「ううん全然、そりゃあ気になっちゃうよね。でも詳しいことは内緒。『秘密の部屋』は、俺の准教授職にとって大事な部屋ってことしか言えないかな」
最上先生から与えられたヒントを、残念ながら私は活かしきれない。何のことやら、全くお手上げだ。
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