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背後から突然声をかけられ、奈緒子はぎょっと肩を揺らした。
振り向くと、そこには見知らぬ男性がいた。
白いジャケットに青のYシャツ、白ズボンという安っぽいホストのような格好は、とても趣味が良いとはいえない。
態とらしく伸ばした襟足も、この人物には似合っていない。
何より最も厭なのが、底意地の悪そうな細い眼だった。
奈緒子の中の警戒心が、ざわりと一斉に棘を立てた。
「……そうです。最上准教授付です」
「ふーん。で、最上の野郎の下でどんな仕事してんの」
と話を続けながら、男は最上が座る筈の席へ無遠慮に腰を下ろした。
いや、何なのこの人。
奈緒子は思わず眉根に皺を寄せたが、不快な男を追い払う術(すべ)は持ちあわせていなかった。
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