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真正面から歯向かってしまった。何をされるのか分からない、怖い……けど、撤回なんか絶対にしたくない。
奈緒子は震えを圧し殺そうと、グッと唇を噛み締めた。
「……っはぁ!?ただの職員のくせに調子乗んな!お前みたいな使い道のない最上の雌豚は、腰振って喘いでりゃ良いんだよ!」
あまりに下卑た物言いに、奈緒子は絶句した。自分に近付いてくる人影にも気がつかないほどに。
「はい、やめー」
力の抜けたその声によって、淀んだ空気が急に澄み、温かくなった気がする。
最上航は、奈緒子の脇に立ち、「もう大丈夫」と言う代わりに、肩にそっと手を乗せた。
口許に微笑を張り付けながらも、目の前の男へと向ける眼差しは厳しく、鋭いものだった。
「どうして揉めているんですか……って、殆ど聞いていたので知ってるんですけどね」
「おやぁ、天下の最上大先生が盗み聞きですか?」
「榊先生こそ、うちの鈴原さんに卑猥な暴言をふっかけて楽しむなんて悪趣味ですよ」
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