３４５

　「３４５からのLINEに絶対返信するな」っていうのがその頃の仲間内同士での話題だった。
　３４５っていうのはこうだ。あるとき突然、「３４５」っていうアカウントからのLINEで「〇〇さんですか？」っていうメッセージが届く。メッセージは自分の本名の苗字から一字違いになっていて、例えば俺が山中だったとしたら、「山本さんですか？」っていうメッセージが届くんだ。
　そのまま無視しておけば何も起こらない。でもそこで「誰ですか？」って返信すると、「お前こそ誰」っていうメッセージが返ってくる。そしてその後LINEの電話が鳴る。

「その後どうなるの？」って瀬川が言った。
「知らない。ただその電話を受けた奴は、会社出てこなくなった。」
　話を聞いていた仲間たちが「えぇー」っと声を出した。その大半はしらけた感じで、全然信じてそうになかった。
「いたずらなんじゃねえの？」

そうかもしれない。でも、そうじゃないかもしれない。なぜなら俺のLINEにはいま、３４５からの「山本さんですか？」っていうメッセージが届いているからだ。