それは……

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それは……

「ねぇ、おねえちゃん、ぐちゃぐちゃのおじさんって知ってる?」 「ぐちゃぐちゃのおじさん? なによそれ?」 私が、その噂を聞いたのは5月も終わりの頃だった。 「あのね、そのおじさんはね、雨の日に放課後の教室に一人でいると、やってくるんだよ」 「ふ~ん……」 「おじさんはね、ボロボロの袋みたいなものをかぶっていて、片手に大きな大きな袋を持っていて、もう片方の手には錆びた包丁を持ってるんだ」 くだらない。 小学生の間で流行っている、いわゆる都市伝説というヤツだろう。 特に興味があったワケではなかったが、病院の待合室では他にする事もなく暇つぶしになればと、隣に座る見知らぬ少年からその話を聞いていた。 「それでね、おじさんは一人ぼっちでいる子の前に現れてこう聞くんだ『キミは一人かい?』って、そしたらねこう答えなきゃいけないんだ『いいえ、友達はいるけど今は一人です』って」 「なによそれ」 「ともかく、ここでもし無視したり、『うん』とか『一人だ』とか言ってはダメなんだよ、おじさんにぐちゃぐちゃにされちゃうんだよ」 「変なの」     
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