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「でもね、もし本当に誰も友達のいない子が『一人です』って言うとね、おじさんは一つだけ、その子の欲しいものをくれるんだ」
「欲しいもの?」
「そう、『ナニが欲しい?』っておじさんが聞いてくるんだって、例えば、勉強の出来る頭が欲しいとか、かけっこの早い足が欲しいとか……そう言うとね、おじさんが本当にそれをくれるんだよ」
「ふ~ん……」
少年の話がひとしきり終わったところで、母がこちらに手を振ってきた。
「会計終わったから帰るわよー」
私は立ち上がり、ふと少年の方を見た。
少年は両足にぐるぐると包帯を巻いている。
「私、もう行かないと」
「うん、バイバイお姉ちゃん、お姉ちゃんもおじさんに会えるといいね」
(……『も』?)
私は、少年の足を指さした。
「ねぇ……その足」
「ああ、コレ? おじさんにもらったんだ、この足」
少年は、子供とは思えない不気味な笑顔をコチラに向けてくる。
なんだか無性に気味が悪くなり、私は母のいる方に急いで向かった。
病院から出る時、気になって待合室をの方を振り向いたが少年の姿はもう見当たらなかった。
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