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そこには……
ボロボロの麻袋の様なものを頭からすっぽりと被り、作業着というのだろうかそれを着た恐らく男性であろう異形のモノが立っていた。
手には頭に被っているのと同じ様な麻の大きな袋を持ち、もう片方の手には錆びた長い刃物を持っている。
私は一瞬で、そいつがなんなのかを理解した。
(コイツがぐちゃぐちゃのおじさん……)
麻袋の顔の辺りにはいびつな二つの穴が空いている。
その奥は真っ暗で、何があるのかはわからない。
私を見ているのだろうか?
「フーっ……シューっ……フーッ……シューッ……」
おじさんの呼吸音だけが響いていた。
確か……
私はアノ少年との会話を思い返していた。
『……もし本当に誰も友達のいない子が『一人です』って言うとね、おじさんは一つだけ、その子の欲しいものをくれるんだ』
「私は……」
私は一人だ──
「キィィミィハァァァァっ……ヒィィトォォリィィィ──ッ?」
「私は、一人です」
「…………」
おじさんは何も言わずに、ジーッと黙っていた。
それはとても長い時間に思えた。
背中に冷たい汗が伝い落ちてゆく。
逃げ出したい気持ちでいっぱいだった、逃げだそうかとも思った。
すると──
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