それは……

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「ナァァァァァニィィィィがぁぁぁぁっ……欲シいィィィィっ?」 ナニが欲しい──? 確かにおじさんは私に向かってそう言った。 私は戸惑った。 だが、それと同時に、なんともいえない高揚感もあった。 確か、病院にいた少年が言うには、おじさんはなんでもくれると言っていたからだ。 『なんでも』  美しい顔、賢い頭。 欲しいものは沢山ある、けれども目下、私を困らせているのはクラスメイトからの無情なイジメだ。 それさえ無くなるというのなら、私は魂を悪魔に売っても構わない。 私が欲しいものは── 『静かな学校生活』だ。 このクラスという地獄の中から抜け出て、新しい生活が欲しい。 そう思った。 その時── 「いいいいいいいよぉぉぉぉぉぉぉ~~~~~っ……ぞれぇっ……あげぇぇぇぇるぅぅぅぅぅぅぅぅっ……」 私が言葉を発する前に、突然おじさんはそう叫び、そして…… 一斉に開いた教室の窓から突風が吹き荒れて、塵一つ残さず忽然とその場から消えていなくなった。 教室はまるでナニもなかった様に、いつも通りだ。 窓からは冷たい風が入ってカーテンを揺らしている。 「今のは……夢?」 私は、しばらくその場から動けずにいた。 「家に帰ろう……」 足に走った一瞬の痛みで我にかえり、私は一人教室を後にした。     
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