2人が本棚に入れています
本棚に追加
「ナァァァァァニィィィィがぁぁぁぁっ……欲シいィィィィっ?」
ナニが欲しい──?
確かにおじさんは私に向かってそう言った。
私は戸惑った。
だが、それと同時に、なんともいえない高揚感もあった。
確か、病院にいた少年が言うには、おじさんはなんでもくれると言っていたからだ。
『なんでも』
美しい顔、賢い頭。
欲しいものは沢山ある、けれども目下、私を困らせているのはクラスメイトからの無情なイジメだ。
それさえ無くなるというのなら、私は魂を悪魔に売っても構わない。
私が欲しいものは──
『静かな学校生活』だ。
このクラスという地獄の中から抜け出て、新しい生活が欲しい。
そう思った。
その時──
「いいいいいいいよぉぉぉぉぉぉぉ~~~~~っ……ぞれぇっ……あげぇぇぇぇるぅぅぅぅぅぅぅぅっ……」
私が言葉を発する前に、突然おじさんはそう叫び、そして……
一斉に開いた教室の窓から突風が吹き荒れて、塵一つ残さず忽然とその場から消えていなくなった。
教室はまるでナニもなかった様に、いつも通りだ。
窓からは冷たい風が入ってカーテンを揺らしている。
「今のは……夢?」
私は、しばらくその場から動けずにいた。
「家に帰ろう……」
足に走った一瞬の痛みで我にかえり、私は一人教室を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!