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「口裂け女?」
眼鏡をかけた地味な見かけの若い女性が目を丸くして目の前の年配の女性に向き直る。
ふくよかな体型に同じく眼鏡、短い髪の毛にクセっ毛という、優しい雰囲気の年配の女性が頬に手を当てて困ったように頷く。
「最近、子どもたちの中で話題になってるのよね。あなたも聞かない?須藤先生」
須藤先生と呼ばれた眼鏡の若い女性は、目を丸くしたままぱちくりと目を瞬かせながら隣のデスクの年配の佐藤先生を見返す。
「口裂け女って、あの口裂け女…ですよね?あのひと昔前にブームになった…」
「だと思うんだけど…」
すると向かい側のデスクから体つきのしっかりした男の人…北村先生が伸び上がってこちらの話に加わった。
「知ってますよ!確かそれって、受験戦争が激しい時で、子どもたちが塾に行きたくないからって嘘ついたら広まってパニック状態になったんでしょう」
すると北村先生の隣のデスクの本田先生…いつもニコニコしていて少しメタボ体型…も口を挟む。
「いやいや、実は口裂け女ってのは江戸時代にも現れてたんだよ?」
「え、そうなんですか?」
須藤先生が驚いた顔で本田先生を見る。
口裂け女…。赤いコートに口に大きなマスク、
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