第一章 月が堕ちる森

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 金を稼ぐといっても、ここのバイト料など、微々たるものであった。 「はい、ありがとうございます。観たい映画は決めました」  では、上映時間を調べておこう。すると、九時の上映であった。 これは、観たいと言いつつも、俊樹は時間で選んだのであろう。 俊樹は、俺に気を使っている。 土曜日を全て潰してしまわないように、早い時間を選んだのだ。  でも、俺は気付かないふりをしておく。 「ええと、映画が終わったら、又、物件の下見をお願い」  俊樹は、今日を最後にここへは来ないと言っていた。 分身を長く出しているので、本体が弱ってきているらしい。
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