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「帰ろう、一緒に。──あの、俺たちの家に」
「……ふざけるな。いまさらそんな調子のいいこと……」
繰り返される懇願に、安積がらしくない弱々しい声で抗議する。しかし、それが彼の本心でないことは、やがてぎこちなく周防の背中に回された腕が証明していた。
「……もし一緒に帰ってくれないなら、今、この場で襲うぞ」
そうして、最後の手段とばかりに口説き文句とも取れる脅迫を仕掛けると、その言葉がおかしかったのか、腕のなかで安積がくぐもった笑い声を聞かせる。
そのまま、ゆっくりと身体を離すと、周防を真っ正面から捉えた安積が、ふと挑発めいた蠱惑的な笑みを唇にのせてうそぶいた。
「──おもしろい。やれるもんならやってみろ」
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