彼女のパパ

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 おまえいま変な顔しただろ。実はさ、きょうはそれを報告しにきたんだ。おれ、ほんとうに裕子ちゃんのパパになる。このまえ唯さんと入籍した。近いうちに披露宴をやる予定なんだ。  驚いたみたいだな。えっ。おれのどこがよかったか? そんなの聞かれたって、おれにわかるもんか。なに。彼女の前の夫が女に器用な男だったから、逆を選んだって、おれが不器用みたいじゃないか。前のだんなより若い色男がよかったんじゃないか。気持ちも若返るってもんだ。妬くなやくな。  そうだ。もうひとつ報告があった。おまえ前にさ、十以上も年下の相手とつきあうのは切腹ものだって言っただろ。唯のやつ、腹を切ることになるかもしれない。年齢的に自然分娩は危険だからって、帝王切開を勧められたんだ。妊娠二カ月だって。  えっ。介錯してやる。よせやい。その顔、冗談言ってるみたいに見えないって。  おまえもそろそろ結婚しろよな。もう三十二なんだからさ。刀を振りまわしてばかりいるから、お嫁にいけないんだぜ。  バカ。そんなもの抜くなよ。商売品だろ。じゃあな。おれ、もう行くから。あとで招待状を送るよ。おまえをもらってやれなくて、ごめんな。 終
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