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「イブは店が忙しいんだよねえ。パーティの準備とかでグループ客が多いから」
おれはことさら、イブと言い、彼女の様子をうかがった。唯ちゃんは足もとを見ていて、表情はわからなかった。余裕じゃないかって。彼女の気持ちがわかりはじめていたからね。きっとおれにプレゼントを渡し、告白でもするつもりじゃ――。
「打ち明けたいことがあるの」
彼女が瞳を上げた。
おれはエスカレーターの引き込み口に足をとられそうになった。かろうじて踏みとどまると、どうにか表情をとりつくろい、
「それでも夕方になると、お客さん、さあっといなくなるんだ。イブ、だからね。六時過ぎにはあがれるんじゃないかな」
おれがそう答えると、唯ちゃんの顔が明るくなった。
「食事をしてもらってもいいですか」
いいです、いいです。もちろんですとも。おれの余裕はくずれ、そくざに約束した。唯ちゃんは決めていたレストランがあるようで、詳しいことはあとで連絡するから、と携帯番号を交換しあった。
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