彼女のパパ

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 いままでおれ、女がむやみに宝石を欲しがるのを、くだらないことだと思っていた。いまでは違う。自分の女を美しく着飾らせてやるのが、男にとってどんなに素晴らしいことか、おれはよくわかったよ。 「サイズはそれでよろしいですか?」 「ええ、母とサイズはいっしょなんです」  唯ちゃんと店員の、そんなやりとりを聞きながら、ボーナス併用で何回払いにしようかと考えていた。  その場は冷やかすだけにし、おれたちは宝石店をあとにした。もちろんこっそり買っておいて、イブにプレゼントするんだ。彼女の驚く顔が目に浮かぶなあ。そして食事のあとは……。うふっ。おれの想像はもりもりふくらんだ。  デパートを出ると、街路樹のイルミネーションがきらめいていた。昼過ぎに会う約束をしたのに、あっというまに暗くなっていた。このあとどうしようかと考えていると、唯ちゃんが、「タクシー」と手を上げ、止まった車に乗り込んだ。 「きょうはありがとうございました」  にこやかな笑顔を向け、おれが誘うより速く、さあっとタクシーで走り去った。  ――あれ?  やっぱり、お父さんへのプレゼントだったって。そんなことあるもんか。もっとも、おまえにいくら言ったって、唯ちゃんの心模様なんてわかりっこないからな。いまからクリスマスイブが待ち遠しくてしかたないよ。あと一週間かあ。  そのあと。唯ちゃんと会っているか? 店で会うよ。いつもどおり、お母さんと買い物に来るんだ。来れば、いつでも言葉を交わす。  プライベートで? 会わない。携帯にかけたけど、いつも忙しいんだ。じらしているんだと思うな。ほんと、身をこがされる思いだよ。最高のイブを過ごしたらさ、またおまえに報告するから。じゃあな。ちょっと早いけど、メリークリスマス。
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