彼女のパパ

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 えっ。いままで彼女を、「唯ちゃん」って呼んでたんじゃないかって。バカ。いくら年下だからって、会って間もないのに、そんなに気安く呼べるかよ。ふだんは天野さん、河合さんだ。 「先日はありがとうございました」  裕子ちゃんが言葉を続けた。「河合さんになにを贈ったらいいか、お母さんが迷っていたので、お父さんのプレゼントと言って、本人に選んでもらいました。本当はうち、母子家庭なんです。お母さん、ほら」  裕子ちゃんが、母親の腕に触れてうながした。 「つまらないものですが」  唯さんが細長い包みをテーブルに滑らせた。 「河合さんが欲しがっていた腕時計です」  裕子ちゃんが口を挟み、また母親にたしなめられていた。おれはそんな様子を黙って眺めているしかなかった。唯さんから、おれへのクリスマスプレゼントだ。 「河合さんもお母さんにプレゼントがあるって、言ってましたよね」  裕子ちゃんの言葉にわれに返った。おれは思わず、上着のポケットに手を入れた。こんどは、唯さんはたしなめなかった。二対のそっくり同じ眼差しが、じいっと向けられてきた。とても自分の誤解を説明できる雰囲気じゃなかった。  そっと指輪の入った包みをテーブルに乗せた。 「メリークリスマス」  つぶやきながら、おれ、どんな顔してたんだろ。     
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