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楠井田との面談は彼が真面に会話ができる状態の時を見計らって行われた。
楠井田と初めて顔を合わせた時の印象は今でも明瞭に覚えている
法廷では落ち着きがなく始終頭を掻き毟っていたのだが
そのせいか髪の毛は殆ど抜け落ち地肌に浮き立つ引っ掻き傷が痛々しかった
しかし、面会の際に目の前に現れた楠井田はひどく憔悴はしていたものの
その顔には僅かに安堵のようなものが見られた。
嵐の前の静けさとでもいうのだろうか
それとも、壊れる寸前に残された最後の理性が働いたのかだろうか
このあとの楠井田の行動を考えると今はそのように思えてならない。
伏し目がちで生気の抜けたこの男が3か月という短期間に8人もの人間を殺した連続殺人犯とは正直思えなかった。
儀礼的な挨拶を交わし限られた時間を無駄にはできないと私は早々に録音テープを回しインタビューを始めた。
―――唄が聞こえるんです
それが楠井田の発した最初の言葉だった。
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