父はどのようにして魚肉ソーセージで凶霊と戦ったのだろうか

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実は数か月前から怪しげな新興宗教の勧誘に付きまとわれている、 30代ぐらいの女性と中学生ぐらいの女の子の二人連れ、 30代の女性はインドだか中近東風の衣装をまとい、国籍不明のエスニックぽいパワーストーンやらアクセサリーをジャラジャラさせ、 その限りなく原色に近いアイシャドー、表皮の上の化粧が岩盤化するぐらいの厚化粧、ファンデーションの代わりに道路工事のアスファルトを使ったらと思った、 いかにも「私はスピリチュアル系よ」ってウザい無言のアピールは、ソイツがオトコにまったく縁がないことへの不満解消手段でルサンチマン。 私の嫌いなタイプだった。 でも、かくいう、私にも男は居ない、同族嫌悪か?これ以上は考えたくない、 女の子の方、着ているモノは上等なんだけど「どうだブランドモンじゃ~」の自己主張が全く無い、物腰といいホントの金持ちじゃなくて資産家の令嬢ってこんなんなん感じなのだろう、 そもそも私には大金持ちで資産家で育ちの良い友達などいない、だから良い家の令嬢はほぼ想像の世界だったけど、 その令嬢、大人しい感じ、あれこれ喋ったりもせず、同族嫌悪のスピ系の横に黙って立っているだけで、だから、強く印象に残らなかった。 で、とにかく、訳が分からず怪しい連中なので適当にあしらい続け、それでも、帰り道や自宅近くで待ち伏せされると「ストーカー法、警察にとどけるゾ」と強い言葉で警告し撃退しておいた。 ところが、社内でそうも言っていられなくなった、 先週、ウチの社長と役員総出で私のところにやってきて、頼むからあの二人連れの話を聞いてやってくれと泣きつかれた、 なんでも、ウチもメインバンクの偉い人から脅されたらしい、断るとウチの会社への融資が止まり、その銀行からの貸付金を即刻引き上げるとのことだ、 反対に言うことを聞くと貸付の利息と条件が社長と役員一同マイムマイムを踊り出すぐらいの好条件になる、 社長は本当に泣いていた。 なんだかよくわからないが、わが社の命運が中途採用2年目の私の双肩にかかったのである。 近くのファミレスで会ってみることにした。 さっそく同族嫌悪スピ系30代が切り出し 「あなたの出生の秘密に気付いたようね、あなたのお父様のことも」 「あなたとお父様に消滅させてほしい凶霊がいるのです、他の闘魔師では歯がたちません」 「なんのことを話されているのかわかりませんが」 とりあえず、最初はとぼけてみることにした。 スピ系は続ける 「隠さなくてもいいのですよ、あなたのお父様はわが国でも特S級の闘魔師。あの東北の怪村、凶霊たちの巣窟の沢杉村、たった一夜で闘霊し全ての凶霊を滅霊した伝説の闘魔師だってことも」 「おとうさんはまじない師でもなければ、闘魔師なんかでもありません、まぁ、お盆の頃、テレビで心霊特番なんかやっていたら見ていたりするけど」 「そりゃ、娘さんとしては、お父様のあの凶霊との闘い方はショックで受け入れがたいですよね、ましてやチョンマゲなんて…」 こいつら、あの事を知っている。 普通、人の親、ましてや娘の親が下半身まっ裸の状態、しかも巨大化し硬さが増した魚肉ソーセージを振り回しながらとすれば、多少の困惑、嘲笑感が含まれる、 でも、このスピ系、そんな感じはまったく出さない、ニュース原稿を読むように淡々と語りやがる その不気味さと奇異さに私は続きの言葉を返せなかった。 スピ系は続ける 「あなたのお父様はわが国でも五本の指に入る闘魔師、そして一子相伝、その血を唯一受け継ぐ一人娘のあなた様も闘魔師、まだ自分の能力に気づいていないだけです」 横に座ってる令嬢が相変わらず無表情だった。 スピ系がわずかに興奮してきたのがわかった 「例え国家転覆クラスの凶霊が現れたとしても、父と娘、お父様とあなた様がご一緒ににパンツを脱げば…」 次の言葉が思いつかず、かわりに拳でテーブルを思い切りなぐりつけた、スピ系の言葉を遮った、 スピ系、興奮したことを私に悟られたことを恥じ入りるように 「大変失礼いたしました、もちろん、あなた様たちの闘霊の方法は心理的な障壁が極めて高いことは十分に承知しております。それに十分応えるだけの報酬は用意させていただきます」 「ウチはお金持ちでは無いけど、お金に困っているわけではありません。代わりにあなたが裸踊りをされてはいかがでしょうか」 父と娘の二人並んで下半身露出、しかもおとうさんの魚肉ソーセージは巨大化、硬質化、天を仰いで自立状態… まぁ、正確なサイズはチーズかまぼこ、チーカマだけど、 とにかく、娘としてこんなこと耐えれるわけない、 こんなことさせられるぐらいなら、 転職先の会社を潰す、 名家だか資産家だか知らないがコイツの家を潰して七代祟る、 世界地図から日本って国を消してやる、、 全人類にノストラダムスが裸足で逃げ出す地獄を見せてやる… さっきから、スピの系の横に黙って座っている、娘、女の子、令嬢、女子中学生、金持ち、とにかくそんなヤツが私をジッと見つめていた。 ほほぅ、ウチ会社のメインバンクに圧力をかけれるぐらいの家柄の娘、眼の力が違う、 その小娘が静かに語り出した。 「私の一族、その権力と財力、それらを守りさらにそれ以上を得るため、何百年にもわたり多くの人を苦しめてきました」 生まれつき他人に指図し命令するだけの人生、口調にはそんな穏やかで上品だけども、その影には天性ともいえるとてつもない威圧感が隠れている、 「その無数の怨念、父は悲惨な最後をとげ、母の心は破壊され、一族で残るのは私と弟だけとなりました」 私は小市民、金持ち一家の没落と不幸話は恰好の酒のツマミとなる。 金持ちの不幸バンザーイ!! 小娘、そんな私の心を見透かしてか 「私は弟だけは護らなければなりません、あなた様とお父様にはどうしても数百年の間わが一族に禍を為す凶霊と闘霊し滅霊させていただきたいのです」 「そのためには、わが上錦ヶ浦郡家(かみにしきがうらごうりけ)の財力と権力、持てる力の全てを使ってでも、例えどんな手段を使ってでもお父様とあなた様のパンツを脱がせてみせます」 私の脳に過電流が走った、 とんでも無い歴史と財力と権力を持つ家、その娘が私とおとうさんのパンツを脱がそうとしている、、 私の感覚が日本刀のように鋭くなってきた。 感情と思考が地底の湖のように澄みきっていく、今のメンタルの状態、今までの記憶と経験それらが融合されてかこれからやるべきことがハッキリと見える。 しかし、その澄みきった思考が向かうのは天上の光の世界ではなかった、深い地底の漆黒の闇の世界だった、 私はこの危機的な状況に興奮している、心の奥底で喜んでいる、 とにかく今はこのことを目の前の二人に悟られてはならない、 なんとか心拍をおさえ呼吸を整えた、できるだけゆっくりと話した 「お嬢さん、闘魔師のお仕事は凶霊を消滅させることだけではありませんよ」 私の意識の覚醒と興奮の果てにたどり着いたのは、愛しい人が傷つき不幸になることに喜びを感じるサディズムだった。 「闘魔師は凶霊を召喚し、誰かに向けて放つこともできるのですよ、お忘れなきよう」
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