ツギハギさん

4/4
前へ
/4ページ
次へ
「私の存在を知ってしまったから」 「は!?」  突如聞こえた普通の声。それは縫い付けられた口から発せられていた。  ぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶち  口を縫っていた糸が切れる音か唇が裂ける音なのか。口の周りを紅く染めながら言葉を紡いでいく。 「私の存在を知る者の前に私は現れる。でも私は地縛霊のようなもの。ここから離れられない。だから呼んだ」  終始理解できなかった。呼んだ?どうやって? 「最初の書き込みは私自身。最初の女はすぐに取り込んだ。死んだ。その端末で書いた。そして呼んだ。あなたは呼ぶ必要なくて嬉しい。知ってくれた。近くにいてくれた」  ぞっとした。霊の自演ってなんだよ!  ぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶち  再び嫌な音。今度は目が開き始める。その目を見た瞬間、世界が黒くなった。 「私と目が合ったら死んでしまうの。でも安心して?あなたの肉は私が取り込むから」  ぐち。ざく。ぶちぶち。ぐしゃ。ごぽっ。ぷしゅっ。どくどく。ばき。みし。ぐちゅぐちゅ。めき。  部屋が赤くなり気味悪い音が消えた頃、異形の者ツギハギさんが呟いた。 「私の存在を知ってしまったそこのお前」 「ツ、ギ、ハ、オ、マ、エ、ダ、!」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加