1人が本棚に入れています
本棚に追加
「私の存在を知ってしまったから」
「は!?」
突如聞こえた普通の声。それは縫い付けられた口から発せられていた。
ぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶち
口を縫っていた糸が切れる音か唇が裂ける音なのか。口の周りを紅く染めながら言葉を紡いでいく。
「私の存在を知る者の前に私は現れる。でも私は地縛霊のようなもの。ここから離れられない。だから呼んだ」
終始理解できなかった。呼んだ?どうやって?
「最初の書き込みは私自身。最初の女はすぐに取り込んだ。死んだ。その端末で書いた。そして呼んだ。あなたは呼ぶ必要なくて嬉しい。知ってくれた。近くにいてくれた」
ぞっとした。霊の自演ってなんだよ!
ぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶち
再び嫌な音。今度は目が開き始める。その目を見た瞬間、世界が黒くなった。
「私と目が合ったら死んでしまうの。でも安心して?あなたの肉は私が取り込むから」
ぐち。ざく。ぶちぶち。ぐしゃ。ごぽっ。ぷしゅっ。どくどく。ばき。みし。ぐちゅぐちゅ。めき。
部屋が赤くなり気味悪い音が消えた頃、異形の者ツギハギさんが呟いた。
「私の存在を知ってしまったそこのお前」
「ツ、ギ、ハ、オ、マ、エ、ダ、!」
最初のコメントを投稿しよう!