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近年益々短くなってきた過ごしやすい秋も終わり既に寒さが身に染みる初冬。寒さに弱い大学生の俺、茂は布団に潜りながらだらだらと掲示板を見ていた。
「なんか面白い事ねぇかな……っと」
お菓子片手に見ているとある文字が瞳に映る。
「またこれか……こんなの作り話に決まってる」
とても時期外れだと思えるこの季節に突如として話題になった事件。継ぎ接ぎ。ある日掲示板に書き込まれた内容が世間を賑わせた。それを書いたのは女性。ある日の帰宅途中、一人で夜道を歩いていると前方に街灯に照らされた人影が見えたという。
その人影がゆらり。ゆらり。
人間のとは思えない、まるで骨がないかのような動きで近付いてくる。女性はそれを見て目を見開いた。
それは目と口が糸で縫い付けられ身体中が継ぎ接ぎ状態になっていた。街灯の薄暗い光でも目視で確認できる。違う肉と違う肉を繋いでいる。
怖くなった女性は恐怖で震える両足を叩きその場を逃げ帰宅できた。警察に連絡してもまともに取り合ってくれないだろう。そう考え掲示板へと書き込んだ。その継ぎ接ぎの何かが出た場所も含めて書いた。いや、書いてしまった。
それを閲覧した人の中には興味本意でその場所へ行った人が何人かいるらしい。しかし何人行っても出ない。すると一人がこう書き込んだ。
「試した人達は一人で夜道を歩いてるの?同じ状況じゃなきゃわかんなくない?」
これに納得した閲覧者達はやり取りを重ね、一人の代表を選んだ。その人が現場に行くことになった時間を少し過ぎた頃。書き込みが一つ。
「やば。変なのいるぞ」
「どんなのだよ」
「なんか動きがおかしい。普通じゃない」
「え、冗談でしょ?」
「いや。変なのが何かを言っ」
「ちょ。途中送信とか焦りすぎ」
それ以降のレスは代表以外のIDが連なった。相談の結果、警察へ連絡をした。捜査するも現場に不審な形跡はなく、近くの防犯カメラにも奇妙な人物は映っていなかった。しかし最後の書き込み以降に代表の姿が防犯カメラに捕らえられていなかった。行方不明になってしまったのだ。
この情報が一部の人間の好奇心を駆り立てた。そして行方不明者が三人になってしまった頃、警察の要請で運営がそのスレを消してしまった。しかしネットの情報は完全には消せず今も漂っている。
ツギハギさん
と名付けられて。
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