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「ツギハギさん、ねぇ。俺は信じられねぇよ」
都市伝説の怪人やら幽霊は信じていない。ホラー映画は素直に怖いと思うが所詮作り物。
しかし特に気に入らない点があった。
「……すぐそこなんだよな。現場」
俺はマンションに住んでるんだが、その窓から見下ろすと見える裏の通り。しかも丁度例の電柱がばっちり見えてる。
「まぁ信じてはいないが見ないに越したことはないな」
内心臆病かよ等と思いつつもカーテンを閉めた。
深夜になり急に目が冴えてきた。
「……ツギハギさんとか考えながら寝たせいか。ったく、いるわけねぇのに俺は馬鹿かよ」
窓からあの場所を見て何もいない事を確認し自分に喝を入れようとした。カーテンに手をかけ思いきり開いた。
「コ、ン、バ、ン、ハ」
窓にへばりついたそれが言葉を発した。一言一言が別人の声のようで悪寒が走り抜ける。まるで継ぎ接ぎ──
「あ」
身体も継ぎ接ぎ、目と口が縫い付けられている。いや、待て。なんで口が縫われているのに声が?
答えはすぐにわかった。それの身体の至るところに人の顔のようなものが埋め込まれている。そこから声を発していた。
「ア、ケ、テ、?」
「っ!」
いきなり
の事に思考が変になっていた!カーテンを急いで閉めると警察へ電話するため受話器を手に取る。耳に付け電話番号を押す。コールの後繋がった!
「あ、助けてくだ──」
「モ、シ、モ、シ、?」
時間が止まったように感じた。受話器から聞こえてくる歪な声。それが同時に背後からも聞こえていたのだから。
「な、どうし──」
振り返ると部屋の中に異形の人影。ツギハギさん。
「っ!」
腰が抜けその場へ座り込んでしまった。同じ空間にいて初めてわかる恐怖。継ぎ接ぎだらけの異形による視覚的恐怖だけじゃなかった。生肉が腐ったような、リアルな臭い。血のようなゴミのような。しかし恐怖の余り吐く事さえ許されない。
「なんで、なんで俺が──」
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