Chapter 2

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 言いたくないことを言わせてしまったと、尚晴は上目遣いで橘を盗み見た。目が合うと、橘は少し困ったように微笑んだ。 「病は気からって昔から言うでしょ? 美郷さんは自分で駄目だ、しんどいって決めてかかってる。そしたら身体もそうなっちゃうんですよ。頑張り屋さんなのは話を聞いていて分かります。頑張ろうとしている自分に、わざわざ自分で水を差してどうするんですか?」 「――仰る通りですね」  橘の言葉で何が解決するわけではない。世の大抵のアドバイスというのは、大抵、悩んでいる本人も、既に考慮してみたものがほとんどだろう。橘はそういう話し方はしない。雁字搦めになった尚晴の心を、尚晴自身で解く手がかりをくれる。   橘はキュッと尚晴の腕を握ると、励ますように揺さぶってきた。 「前々からお伝えしていますけど、尚晴さんの症状って、元々敏感な上に、精神的なものとか薬を飲んでいることによって、変なところで過剰に反応が出て酷くなってると思うんです。凄く辛そうだなって思う日でも、骨格の歪みや体の捩れからでは、そこまで痛みが出る状態にはなってないことが多いんです。お灸や鍼も使いながら、睡眠や精神状態も改善していきましょう。私の専門で可能な部分に関しては、ちゃんと治していくので、安心して下さいね」     
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