Chapter 1

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「ああ、はい……最初は胃が痛いとか食欲がないという感じだったんですが、息苦しくなったり、疲れが酷くて。そのうち夜眠れなくて、仕事中の眠気が酷くて。薬は色々試したんですが、どれも副作用が酷くて、合う薬が見つかるまで大変でした。今飲んでいるのも、眠気があるんですが、それでもまだマシなほうで……」  ここへ来る前に薬を飲んだのも、電車に乗るのと同じで、緊張して気分が悪くならないか心配だったからだ。 「処方されているものは、そんなにきついものではないですし、量的にも少ないですね。薬に敏感なのかもしれませんね」  橘は形のいい顎に手を当てて頷いた。 「主治医にもそう言われています。色々過敏らしいです。それも全部本当に副作用が出ていたのか、新しい薬を試す不安で駄目だったのか、分からない物もありました」  だから腰の治療にもすぐに行く気になれなかったのだ。昔、接骨院にチャレンジしたこともあったのだが、揉み返しで酷い頭痛と吐き気に襲われて一度で挫折した。それを伝えるべきかどうか迷っていると、橘が先に口を開いた。 「ここでの施術も、刺激の強い方法は避けましょう。少し時間が掛かるかもしれませんが、できるだけ刺激の少ない方法で治していきたいと思います」 「あ、ありがとうございます」  これほど丁寧な問診をしてくれるとは思っていなかった。心療内科と同じ、いや、恐らくそれ以上に橘は親身に話を聞いてくれているように感じた。
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